2022/10/29

リラちゃんごめんね。

今日は、ウィペットのリラちゃんに起こった事についてお話ししたいと思います。
本来ならば、訓練所として恥ずかしい事なのですが、もし困っている飼い主さんがいらっしゃったら何かの助けになるのではないかとこの記事を書くことを決めました。
6月上旬に訓練でお預かりしたウィペットのリラ。
性格が良くて、可愛らしい子です。
2週間程経ったある朝、2畳ほどの運動場にいたリラは前足がダランとしていて何か白いものが見えていました。骨折です。
他の犬達が前を歩くのを見て興奮したリラは、縦にとても高くジャンプしていました。
そのジャンプした頂点で当時、上の方だけ金網の種類が違いそこへ細いリラの前足がすっぽりと入った状態で身体が下降し、骨折してしまったのだと思います。
18年間訓練所を運営してきて骨折させたことは無く、とても動揺しました。
とにかく、急いでいつも行っている江別の病院へ行きました。
すると、いつも診て頂いている院長先生は2日後しか戻らないという事で手術が出来ないということでした。
ここから、リラと私と飼い主さんの戦いが始まったのです。
リラの状態を診て獣医さんは一言、開放骨折か。。とため息をつきました。
私は、この時開放骨折の恐ろしさをはっきりと理解していませんでした。
とにかく、院長不在ですので大学病院を紹介して下さいました。
すぐにその足で大学病院へ行きました。
すると、そこの先生は治療方針を決めかねている様子で飼い主さんとのトラブルをとても気にされていて、骨の感染を見極めて5日後に手術した方が良いと言い出しました。
私は、治療方針を迷われている先生にリラを任せる事が不安になり、最初の病院に電話し院長が戻り次第手術をするということにして貰いました。
そうして、消毒と固定だけして貰い最初の病院へ戻りリラを入院させ院長の帰りを待ちました。
すると、戻った院長から電話が掛かってきて、こんなリスクの高い手術はとても請け負うことは出来ないという事で、リラを引き取りに行きました。
そうして、今度は北海道で整形外科でトップと言われる先生に電話をすると、やはり同じくそんなリスクの高い手術は出来ない、飼い主さんとトラブルになるのは目に見えている、その子、治らないよ、手術しても最終的に断脚になるよ、と言われました。
それでも何もしないわけには行かず、紹介して頂いた他の整形に長けている病院で手術をすることになったのです。
でも、この2日の間院長の病院では消毒をしていただけてなく整形に長けた病院で包帯を外した時には、膿んで酷い状態になっていました。
この膿んだ状態を、まず改善するのに数日かかり、手術が出来るようになるまで実に10日間も経っていました。
そうして、やっと手術にこぎつけどうか上手く行って欲しいと願いながら、手術が終わったリラを迎えに行きました。
でも、連れて帰ってきた包帯が巻かれたリラの脚は何だか外側へ反っていました。
数日経って、心配になり病院へ連れていきましたが、包帯の上からレントゲンを撮り、大丈夫ですとの返答でした。
そして、抜糸の日が来て包帯を外されたリラの脚は、くの時に曲がっていました。(上から2枚目、3枚目の写真)
絶望的でした。
物理的にくの時ではとても歩けるような状態ではありませんでした。
とても高額な手術代できっと上手く手術してくれるからだろうと思っていた私が甘かったと、この時最初から気になっていた、病院への不安が的中しました。
知り合いのブリーダーさんにも、もうその子は断脚しかないから、飼い主さんも毎日その姿を見るのは辛いから、同じ子犬を渡してあげたらどうかとアドバイスを頂き、その時の私は、追い詰められていて、飼い主さんにそう言うと、大粒の涙を流され子犬の頃から一緒だったから、それだけは出来ないと仰いました。
私は、なんて酷いことを言ってしまったのだろうととても後悔しました。
そして、その夜八方塞がりだった私は、骨折時から飼い主さんと中で固定しているボルトとプレートが骨の感染にネックになるなら外から固定する方法はないのだろうかと話していたのを思い出し、何気なくインターネットの検索に、骨折名医と入れました。
そうすると、3Dギプス治療法という事をされている病院が目に入ってきました。
住所を見ると千葉県となっていました。
それからすぐに、旅程を調べ診療時間に間に合うか調べると、行けないことはない、という結論に至りました。
でも、聞いたこともない3Dギプスという方法は本当だろうかと疑心暗鬼にもなりましたが、ここの病院のホームページに載っている動画や、その他にも人工骨や再生医療など色々な治療法をされていて、何か信頼できる雰囲気がありました。
私は、ここまでで精神的に疲れており、早く楽になりたい、という気持ちとあんなに、気を付けていたのに、どうして骨折してしまったのか、、という自分の安全管理が足りなかった事も棚にあげそのような事を考えていました。早く楽になりたい、そう思っていました。
でも、この時にリラは、脚を痛め安静が続き不自由な思いをし、飼い主さんは不安と心配で心を痛めそれでも、私に怒りを出すこと無く私の治療の方針をいつも受け入れて下さっていました。
この時に、私は尊敬する稲盛和夫さんの卑怯であってはならないという言葉を思い出し、そうだ私は自分の気持ちの辛さから逃げようとしていたのだと気がつきました。
そして、これしかない、やるしかない、と千葉のいしじま動物病院へ通うことに決めたのです。
その2日後に競技会があり、そのためにお預かりしている子もいたため大会終了後すぐに1回目の通院のため、飛行機とレンタカーを手配し首都高速に乗り、分岐のど真ん中で停車しながら、どうにか間違えず、診療時間内にいしじま動物病院に到着出来ました。
リラの包帯を外すと、(抜糸後、曲がりが酷いので固定して貰っていました。)
もう中のボルトが皮膚から見えて出ていました。
石嶋先生は、淡々と説明されましたが、その言葉には充分な経験と確信が感じ取れました。
リラを入院させた次の日に、くの時に曲がったリラの脚に埋め込まれたプレートの除去手術をし、徒手でリラの骨を真っ直ぐに固定し10日ほど骨がある程度つくまで待ち、そうして3Dギプスをリラの脚に合わせて作成された所で迎えに行きました。
殆ど立てなかったリラを迎えに行くと、スタッと立って歩いてくるリラがいました。
まだ、術後10日余りですので跛行(びっこ)はしていますが、真っ直ぐにたって歩いてくるリラに感動しました。
羽田空港で、離陸までの時間を人通りの少ない端っこの方でリラと待っていると、クレートの中で真っ直ぐに近い脚を伸ばして座っているリラを見て、目頭が熱くなってきました。
そうして、北海道に戻ってきてわずか3日程で、もうびっこも引かなくなり、スタスタと歩くようになりました。
この、3Dギプスの治療法は真っ直ぐに骨に負荷をかけることで骨を強く再生していく治療法で歩かせることと休ませる事を繰り返すことが重要なのです。
今までの、術後何ヵ月も安静にという、そしてプレートを外した時にまた再骨折するというリスクがない治療法なのです。
その上、今回のリラのような開放骨折の場合、骨に感染があることが多く、プレートがあることで抗生物質を飲ませても効かなくなり、骨が融解し断脚になるのです。
だから、リラにとってこの3Dギプス治療法はまさに一番良い治療法でした。
ただ、ギプスがリラの脚の形に沿ってピッタリと張り付いているため、湿疹が出来るので、その消毒に1、2週間おきに通わなければいけないのです。
術後10日後、1回目の消毒にまたリラと千葉へ行きました。
とても、順調に骨は回復していましたが、まだこの時、曲がりが残っていて、そこに負荷がかかり骨が少し見えていたので局所麻酔で2針縫い、そして前回の除去手術時に検査に出していたプレートを止めるボルトから感染しているという結果が出ていました。
レントゲンを見ると、外したボルトの周りに骨の融解が見られました。
それで、抗生物質を安全をみて1ヶ月飲ませて感染をコントロールする事になりました。
ここでも、先生は薬は効くと思うけれど、抗生物質が効かなければ断脚です。とはっきりと言い切られました。
でも、言葉を濁して何回も手術を繰り返すのではなく、はっきりと言われる事に誠意を感じました。
そうして、1ヶ月が経った頃骨の状態と2針縫った抜糸をして貰うのに千葉へ行こうとした、その2日前に、リラの様子がおかしくなり元気が全く無くなりました。
急いで、清田の方にある病院へ連れて行くと肝臓の数値が非常に悪く、10日間の入院を余儀なくされました。
多分、北海道での数回に渡る麻酔と抗生物質で肝臓に負担がかかったのだろうと思います。
この時も、この病院の獣医師と骨折した脚の状態の事で、まだ治っていないだろうから抗生物質を飲ませると言われ、いや脚は順調に治っているから、肝臓に負担の掛かることはしないで欲しい肝臓の治療だけをして欲しいと言い合いになりすったもんだの末、私の要求を飲んで貰い、肝臓の治療だけをしていただけました。
後から考えると、異例の速さで治っていくリラの脚とその余り知られていない治療法に不信があり、自分の病院で預かっている間に、感染が悪化して断脚になったらトラブルになるという危険を感じられたのかも知れません。
そうして、肝臓の治療の方はしっかりとして頂け、血液検査の結果も全て正常に戻り、とても元気になったリラと先日、千葉のいしじま動物病院へ最後の診察に行ってきました。
骨の再生は、しっかりと再生され、融解していた一部の骨も埋まり再生され真っ直ぐになっています。(これを自家修正と言うそうです。自分の力で真っ直ぐに修正していくのだそうです。)
写真の1枚目と4枚目がいしじま動物病院で治療していただいた後の物です。
石嶋先生は、完治です。とはっきりと仰いました。
帰り道、余りに嬉しく守谷パーキングエリアで撮りました。
今では、リラは走り回り骨折が無かったかのように、スムーズに以前のままのリラの歩き方が出来ています。
本当に、奇跡が起きたとしか思えません。
骨の融解も始まっていたので、何度手術しても最終的に断脚になっていたはずです。
北海道中の獣医師が私を責めるような口調で、手術が請け負えないと言った理由が、今では理解できます。
それだけ、獣医師も飼い主さんとのトラブルが多いということだと思います。
この、治療法が広まれば再骨折に悩まされている飼い主さんや骨の融解で断脚を余儀なくされている飼い主さんと愛犬を救うことが出来ると思います。
まだ、広まるまでに時間が掛かるかも知れませんが、千葉まで通ってでも治療を受けた方が速く綺麗に治すことが出来るのだと感じました。
リラの場合、開放骨折に加えて折れた場所が成長骨に近く、そこへプレートをかけると成長の中で左右の脚の長さが違ってしまうという問題もありました。
このような、問題もこの3Dギプスなら解決出来、本当に素晴らしい治療法だと思いました。
この他にも、この石嶋先生は色々な再生治療をされていて、この先生は、どうしたら治すことが出来るのかという事を、常に考えてその方法を編み出されているのだなぁととても感動しました。
私も、訓練士としてもっと精進し誠意を持って生きていかなければいけないのだと、思いました。
本当に、今回はリラにも飼い主さんにも辛い思いをさせてしまい申し訳ない気持ちで一杯です。
犬舎も新しくなり、管理には最高の意識を向けてこれから又、頑張って行きますので、どうぞ宜しくお願い致します。
リラちゃん、本当にごめんね。
あれから、ずっと家の中で一緒に過ごしてきたから、帰っていく日が寂しくなったよ、リラ。